ある町工場の事業承継

日本には電子部品、医療機器、航空宇宙など最先端の高度製品を手がける町工場がたくさんあります。
金属加工などの技術を見込んで先端技術の案件が持ち込まれる。挑戦して納品すると新境地が開け、いつの間にか世界のニッチトップになっていた。そんな、すごい町工場を支えるオヤジさんは80歳を超えて現役の方もたくさんいらっしゃいます。
当然事業承継が問題になります。
事業承継というと、一般的には親族内承継、従業員承継、M&Aなどです。
デューディリジェンスと称して、事業価値をカネで評価し、計画します。
ところが町工場の世界では全く異なった価値観の基に技術が承継される場合があります。

「オマエは気に入った、この事業を引き継げ、設備をみんなやるから持ってけ、」という事業承継です。「オレも昔人に世話になった。だから世間に恩を返す。この事業はやる価値がある。できる人が続けて欲しい。」そんな考え方で、カネの計算をしていません。オヤジさんのメガネにかなった人が究極の無形資産を引き継いだのです。
カネではない、名誉でもない、自分のこころに感じる価値観で行動している。メジャーなケースではないし、気をつけないとそれこそくだらない手間がかかってしまいます。それでも、小説やテレビドラマと見紛う世界が現実にあります。