社長の問題意識を活性化して動機づける

経営支援の流れは、支援依頼、事前分析、面談、実地調査、施策立案、実施、フォローアップであり、基本は変わりません。
しかし、そんなことは関係なしに勝手に改善が進むことがあります。
コンサルタントの分析や助言が必要ないということなのですが、何でそんなことが起きるのでしょう?
依頼した時点で社長に問題意識があり、ある程度解決策も見えているからです。
こんな場合は相手の主体性にゆだねたほうが正解です。傾聴に徹する。質問する。
すると相手の方が問題・課題を抽出し、解決策を導いてくれます。余計な分析や助言は不要、というより有害です。
多少自分の分析・施策とは違うなと思っても気にする必要はありません。
先日まさにそんな事例に遭遇しました。私なりの知見と分析に基づき助言するとかえってかみ合わない議論になってしまうのです。
幸いに事態に気づくことができ、傾聴に徹したところ、進展するようになり、いくつかの施策実施にこぎつけました。
当方の貢献は、社長の問題意識を活性化し、実施に向けて動機づけただけです。
多少の意見の相違には目をつぶって、相手の主体性を重んじたほうがよい、と改めて思いました。

中小企業白書の生産性向上も生産効率の向上

 2018年度版中小企業白書が公開され、各地で説明会が開かれています。
生産性向上は白書でも主要なテーマで大きなページ数を割いて事例を紹介しています。ところがこれも生産効率の向上一辺倒で、労働投入を減らすことばかり訴えています。そうして効率の向上でコストを削減した分を値下げの原資にしてしまい、結果、労働生産性は上昇しないという、無意味な循環を繰り返しています。
 どうして労働生産性の向上を掲げながら生産効率の向上ばかりやっているのか? 中小企業庁の担当者にお会いした際聞いてみたのですが、要領を得ませんでした。マスコミにも(意図的に?)誤ったメッセージが流され、世間にも流布しています。
 労働生産性=付加価値÷労働投入 
です。効率向上で労働投入を減らすことはOKです。しかし、値下げにより付加価値を減少させたのでは労働生産性は向上しません。生産効率面の努力で労働投入を減らすと同時に、營業・マーケティング面の努力でしかるべき値決めを行い付加価値を増やすことが必要です。
 と、ここまで書いて我が身を振り返ると、コンサルティングサービスという分野で、効率の向上も、付加価値の向上もさっぱりだな、と気づいてしまいました。

中小企業のホームページ再構築

 ホームページ構築に「中小企業の」と断る必然性はないのですが、社長が不慣れな場合が多いことは確かです。多くの場合、社内に詳しい人材がいないし予算も限られるのでよいホームページが作れないと思い込んでいます。もちろんそんなことはないので経営支援のよいテーマになります。
 ホームページは事業戦略そのものを体現します。そもそも事業戦略がしっかりしないとよいホームページはできません。また、ホームページ構築もプロジェクトの一種ですから、プロジェクト管理の一般的な手法が応用可能です。言い換えると、プロジェクト管理ができないとホームページ構築もできません。
 結局、ホームページ再構築は、事業戦略をしっかり作る、プロジェクト管理をしっかりする、という基本的な問題に収斂します。人材や予算の不足は大きな問題ではありますが、プロジェクトの拘束条件のひとつに過ぎません。一般的制限事項と言ってもいいくらいです。目的やリソースに応じてプロジェクトを計画していけばよいわけです。
 現在ご支援中の精密部品製造業様もまさにそのようなケースで、ご依頼テーマはホームページの再構築ですが、目的は何ですか?事業戦略は?部門からの要望事項は?といった基本的な質問を掘り下げていくことで会社としての問題・課題がどんどん抽出されていきました。事業戦略やプロジェクト管理の問題に収斂していったわけです。ホームページ特有の技術的問題も、CMSや発注先の選定、責任と役割、といったプロジェクト項目として抽出されました。
 少々不安顔だった社長も、道筋が見え、経営課題と直結してきたことで、訪問の度に生き生きとしてきました。